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ニッケルハルパのアルバム紹介:Olov Johansson「I LUST OCH GLÖD」(2007)①

/ ニッケルハルパ奏者
Uppland

昨日に続き、今回はOlov Johanssonのソロアルバム2作目「I LUST OCH GLÖD」についてご紹介します。

昨日のブログはこちら→ニッケルハルパのアルバム紹介:Olov Johansson「Storsvarten」(1997)

I LUST OCH GLÖD

「I LUST OCH GLÖD」はニッケルハルパ奏者Olov Johanssonのソロアルバム2作目です。

2007年のものなので、前作「Storsvarten」からちょうど10年後です。

ライナーノーツの写真も、「Storsvarten」の写真はちょっとアイドル風で、ニッケルハルパが宙を舞うような不思議な写真が多めなのに対して、こちらは定番の写真というか、今のOlovに近い写真が多い感じがします。

「Storsvarten」の時は「ソロ曲+Olovがメロディをとるデュオetc…」という感じでしたが、こちらの「I LUST~」は「ソロ曲+Olov以外の人もメロディをとるデュオ」という構成になっています。

つまり、ソロCDであるのと同時に、デュオの印象も強いアルバムです。

デュオの相手も4名と、限られた人数で、それぞれの相手と複数曲録音しており、また、演奏相手のこともライナーノーツで紹介しています。

Olovがメロディ以外のパートにまわっている曲もあり、Olovのアレンジを聴くことができるアルバムにもなっています。

曲数・構成など

まず曲数や構成など、前作「Storsvarten」とも比較しながら見ていきたいと思います。

「Storsvarten」も「I LUST~」も曲数は同じ22曲です。

その22曲のうち「Storsvarten」は12曲がソロ、10曲がデュオ等の複数メンバーでの演奏曲です。ただしデュオ等の演奏では、メロディは基本的にOlovがとっていると思います。

一方「I LUST~」は8曲がソロ(そのうち自分でメロディと伴奏をしているのが1曲)、14曲がデュオでの演奏となっており、デュオでは、Olovがメロディを担当する曲が7曲(うち4曲はOlovはフィドル)、メロディ以外を弾いている曲が7曲です。

こうして見ると、前作よりも「I LUST~」の方がデュオの曲数が多く、他の人のメロディにOlovが伴奏などをつけている曲も多い(全体の1/3)のがわかります。

Olovの使用楽器も、「Storsvarten」がキー3列のニッケルハルパ(現在一般的なニッケルハルパ)が14曲、コントラバスハルパ(古いタイプのニッケルハルパ)が7曲、フィドルが1曲なのに対して、

「I LUST~」はキー3列のニッケルハルパが9曲、コントラバスハルパが5曲、フィドルが6曲、オクターブハルパ(低い音域の出る大きめのニッケルハルパ)が3曲(うち1曲は自分でニッケルハルパで弾いたメロディに伴奏をつけている)という感じで、オクターブハルパも使っているのと、フィドルの割合も結構増えています。

アルバムの雰囲気

また、「Storsvarten」は「ニッケルハルパ」的に華やかな選曲や、パイプオルガンなども入ったアレンジ、教会での響きの広さの感じられる録音などが印象的であったのに対し、「I LUST~」はフィドルも使用するなど、よりOlovにとって個人的なつながりのある選曲や、家でくつろいでいるような落ち着いた雰囲気が出ているアルバムという感じがしました。

(私の感想なので、人によって思うことは違うと思いますが)

これは、ほとんどの曲の録音場所が自宅であり、「数カ月にわたって自宅でコツコツ録音した」「ソロやデュオなどのシンプルな演奏を録音するのがおもしろいと思った」とCDに書いてあることから、私が勝手にそう感じているのかもしれません。

私自身は、この情報↑を知る前と後とでは、アルバムの聴こえ方が変わったと思います。

派手なコンサート会場を思い浮かべて聴くよりも、自宅で楽しく演奏している演奏家たちの様子を、横のソファから見ているくらいの距離感で聴くと、アルバムの雰囲気の意味や味がよりわかるような気がしました。

「Storsvarten」も「I LUST~」も、Olovが今でもよく演奏する曲がたくさん入っていて、聴いていておもしろいです。

内容について

そんなアルバムを聴き直してみて、思ったことについて順番に書いていきます。

全部書くと長くなってしまうので、今日と明日で内容を分けたいと思います。

「メロディ+伴奏をしている」と思っていたけど、ソロだった曲

まず1つ思ったのが、こちらの曲「Polska efter Erlandsson」です。

「オクターブハルパ」という低い音域が出るニッケルハルパで、Olovがソロで弾いている曲なのですが、私はこの曲、てっきり「一人で二回弾いていて、自分で弾いたメロディに自分で伴奏みたいなものをつけている」のだと勝手に思っていました。

それくらい音が重なって聴こえた気がしたのですが、実際には普通にソロで(重音などを使って)弾かれています。かっこいい演奏です。

この曲で使われている「オクターブハルパ」は、楽器が大きくてキーの感覚が広いのと、弦が太いので弓の扱いや演奏が難しいと私は思っているのですが、それをこうして弾きこなしているのはやはりすごいなと、あらためて思いました。

Markus Svenssonとのデュオ

Markus Svenssonはニッケルハルパ奏者です。アルバムの中では、ニッケルハルパとコントラバスハルパ(古いタイプのニッケルハルパ)を使ってOlovとデュオを弾いています。

Markusとのデュオの曲は、二人とも同じ楽器を使っているので、「どっちがメロディを弾いているのかな?」と考えながら、よく聴いていました。

たとえば、私が以前よく聴いていたのはこちらです↓「Polkett efter Bohlin」

華やかで大好きです。以前耳コピしたのですが、その時は技術が足りなくて弾けなかったので、今は再挑戦中の曲です。

そんなお二人のデュオですが、今回聴き直して印象的だったのはこちらの曲です↓「Polska av Per Johan Bodin」

この曲はお二人とも「コントラバスハルパ」という、古いタイプのニッケルハルパを使っています。

今回聴き直してみて印象的だった理由は、アレンジです。

この曲、1曲を全部で3回(3周)弾いているのですが、1周目はユニゾンで、2周目・3周目はメロディとメロディ以外に分かれて弾いています。

このアレンジ自体はオーソドックスなものなのですが、印象的だったのは、「短めの曲なのに、1~2~3周目で雰囲気がどんどん変わっている」ということです。

おもしろいなと思いました。

また、最初は気がつかなかったのですが、3周目のAパート(曲の前半部分のこと)だけメロディ担当が入れ替わっているので、そういったところも今回聴き直してみて「なるほど」と思いました。

この曲を作ったPer Johan Bodin(1855-1926)の曲は、長調と短調が混ざっている曲が多く、曲のインパクトが強い分アレンジが難しいと思うので、すごいなあと思っています。

Markusとのデュオ以外にも、このアルバムのアレンジは全体的に「凝りすぎずシンプルに」というコンセプトのように思います。

アレンジのパターンとしてはシンプルでも、曲(演奏)としては広がりがあるものが多く、デュオに関しても「二人で一緒に演奏することを楽しんでいる」という雰囲気が全体的に感じられるなと思いました。


続きはまた明日、書いてみたいと思います。

ぜひニッケルハルパのアルバムにも興味を持っていただけたら嬉しいです。

お読みいただき、ありがとうございました。