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駒の近くを弾く練習

/ ニッケルハルパ奏者

演奏中、「駒の近くを弾く」という弾き方を使いこなせると、表現の幅が増えて、音色の伸びや芯が出てくると考えています。

と言いつつも、私自身駒の近くを弾くのが苦手でした。今も練習中です。

今回は、「駒の近くを弾く」練習を通して、私が思ったことを書きます。

駒(ブリッジ)

そもそも、駒というのは、楽器の真ん中あたり、2つのf字孔の間にあって、弦が乗っているこちらの板のことです。

画像の白い〇で囲っている部分です。

違う角度から見るとこちらです。

駒は、弦の振動を楽器の表板に伝える役割をしています。

弓で弾く場所の範囲

弓を弦に当てて弾く場所の範囲は、キーボックス(キーが並んでいるところ)から、駒までの間の部分になります。

その範囲内を、音の強弱などによって弓を移動させて弾きます。

(つまり、出したい音の強弱や雰囲気によって、弾くポジションを使い分けます)

駒からの距離、音の強弱、弓のスピード・圧力の関係性

たとえば、駒から遠い場所は、「弱い音」を出す時に使い、駒から近い場所は、「音を強くしたり強調する」時(ワルツの1拍目など)に使うことが一般的だそうです。

また、弓のスピードと圧力に関して、以前別の記事で使った画像を貼ります。画像が粗くてすみません。

こちらは、駒からの距離と、弓のスピード・圧力の相関関係を書きこんだものです。

(「ゆっくり」「速く」というのは弓のスピードのことです)

駒と弓で弾く場所の関係性は、一応写真のような図式が原則として成り立っています。

こちらは原則なので、実際に弾く時には、自分なりに弓のスピードや圧力を、さらにある程度自由に調節することができます

※弾くポジション・弓のスピード・圧力については詳しくはこちらに書いています→「弓のスピード」「圧力」「駒との距離」の相関関係について

このように、音の強弱によって弾くポジション(駒からの距離)を使い分けることができ、使い分ける際には弓のスピードと圧力の原則を利用して、効率的に音を出すことができます。

今回の記事で言う「駒の近くを弾く」というのは、上の写真で言えばオレンジのあたり(もしくはもっと駒と近いあたり)を弾くことを指しています。

駒の近くを弾く

こうして原則を見てみると、駒の近くを弾く際には、

「圧力をかけること」と

「弓をゆっくり動かして弾くこと」

この2点が基本となっていることがわかります。

しかし、

  • 実際にどうやって圧力をかけるのか
  • 圧力をかける割合
  • 「ゆっくり」というのはどれくらいのスピードか

といったことは、個人個人の調節の仕方により方法が異なっている、と私は考えています。

ここに書いているスピードや圧力の原則は、あくまでも相対的な目安(=「駒から遠い場所を弾く時」との比較による目安)なので、

ただ単に「圧力をかければかけるほど良い」というわけでも、ただ「ゆっくり弓を動かせばそれで良い」というわけでもなさそうだ、と感じていました。

駒の近くを弾くのが苦手だった

私は、ニッケルハルパを始めた当初から、「駒から遠いところ」を弾く癖がありました。

これは、身体のバランス具合や、腕・手の角度で自然とそうなってしまっていたのですが、その弾き方を続けるうちに、弾く時の圧力の加減も「駒から遠めの場所での調節の仕方」に慣れてしまいました。

留学中に、先生に「駒の近くを弾く練習」をおすすめしてもらい、課題としてやってみたのですが、

圧力のかけ方が上手くなかった(わからなかった)ため、

  • 音がキーキーしてしまう(音にならない)
  • キーキー言わせないようにすると圧力をかけすぎて音がつぶれる
  • 力を入れてしまうので、指・手が痛い

といったことが起きていました。

一応個人レッスンの課題としては、「駒の近くを弾く練習」に一定期間取り組みましたが、

結局はあまり感覚をつかめないまま、留学期間も終わり、駒の近くを弾く練習は途中なまま終わってしまいました。

再び取り組み始める

そして最近、また「駒の近くを弾く」ことを意識して練習し始めました。

一応今までも「弾くポジション」についてはずっと意識はしていたのですが、「意識しているだけでは、実際にはポジションのコントロールが全然できていない(駒の近くを弾いているつもりでも弾けていない)」ということに気がついたからです。

やってみるとやはり難しいと思いました。

「圧力をかけよう」と思うと、ただ力をかけるだけになってしまい、音として成立しない。

かといって、圧力を抜いて弾くと音がかすれてしまいました。

練習で思ったこと

それでも練習するうちにだんだん慣れてきて、感覚がわかってきたような気がしました。

練習を通して、思ったことがこちらです。

  • 「圧力をかけよう」と思うよりも、このポジションで弾いた時の「音のイメージ」を持って弾いた方が良い
  • 圧力はかけすぎない方がきれいに音が出るかも。もしくは、圧力のかけ方を変えると良い
  • 弓のスピードも「ゆっくり」と思いすぎなくていい(音を弾きたいスピードで弾けばいい)
  • (駒の)かなり近くを意識して弾かないと、「近く」にならない(近いと思って弾いても、思っているよりも遠い場所で弾いていることが多い)

「圧力が必要」「ゆっくり動かす」というのは基本中の基本なので、知識としてはまず知っておいた方が良いことなのですが、

私の場合、これらをやろうとして、かえって自己流の変なやり方になっていたかも、と思いました。

以下、さらに詳しく書いていきます。

音をイメージすると良い

「圧力をかける」「弓のスピードをゆっくり」以外に、私の場合は

「自分が出したい音のイメージを持って、音を出す」

ことがどうやら重要だ、と思いました。

駒の近くを弾いている時の音のイメージです。

このイメージを持たずに音を弾くと、「圧力」と「スピード」のことを頭で考えながら音を出すので、弾く際の動きに一貫性が無かったり(手と足の出し方を考えながら歩くようなもの)、前後の音との音楽のつながりが消えてしまいます。

音のイメージを自分で持つことができれば、自然と、それに必要な圧力やスピードが調節されるような気がしました。

イメージを持つためには?ー動画を見る

音のイメージを持つには、たとえば、駒の近くを弾くことを効果的に取り入れいている人の演奏動画を見ると良いと思いました。

そういう人の演奏を見ると、音としてはしっかりした音が出ていて力強かったり鋭かったりしますが、手や腕にはあまり力はこめずに、効率的に音を出している様子が見えてきます。

圧力のかけ方自体が変わる

そんな演奏の様子と、音のイメージを持って自分でも弾いてみると、不思議とそんなに大変な思いをしなくても(力をかけなくても)音が出ることがわかりました。

留学中の課題で、音をキーキー言わせながら頑張って弾いていた時の弾き方とは、全く違う弾き方です。

私の場合、一番違うと思ったのは、圧力のかけ方です。

おそらく、以前の私は「弓を止めた状態での圧力のかけ方(=弦に対して垂直方向の力のみ)」を継続して行うような感じで弾いていたのですが、

もっと動きの中で圧力をかけていくというか、方向性を意識して圧力を自然にかける(=弦に対して垂直方向の力+弓の方向性)方がより音が自然に出るのかな、と思いました、

「垂直方向の力をかけることを継続する」のではなく、「弓の動きの中で垂直方向の力を使っていく」という感じです。

弾くポジションを変えるのにも練習が必要

さらに、演奏中に「弾くポジションを変える(使い分ける)」というのも、練習が必要だと思いました。

奏者の動画を見ていると、結構自由に弓の位置を操っている(駒から離したり近づけたりしている)ように見えるのですが、これがなかなか難しく、慣れないと不自然な動きになってしまいます。

(横移動に引っ張られて、ボーイングの雰囲気もぎこちなくなる、という感じです)

「ここでは駒の近くを弾いて、ここでは駒から遠くを弾いて…」というのを、最初は意識しながらゆっくりと弾いて慣れていって、少しずつ自在に操れると良いなと思っています。

また、これに関して現時点で思っているのは、「弓先の位置を意識し、一瞬前に準備してから弾くつもりで弾くと、弾く位置のコントロールがしやすいかも」ということです。

(私の場合、弓元よりも弓の先への意識が薄いから、そう思うのかもしれません)

弓先の位置を、次の音を出す前にコントロールして準備しておくことで、弓全体が通る位置をコントロールしやすくなるかもしれない、と思っています。

表現の幅が広がり、音色が変わる

最初にも少し書きましたが、「駒の近くを弾く」ことが自由に使いこなせるようになると、表現の幅がぐんと広がります。

また、音色に伸びが出るし、音に芯が生まれます。

力強くてしなやかな音が出るようになります。

さらに、駒の近くを弾く弾き方に慣れると、力加減や弓の扱い方が変わり、

「駒から離れた場所」を弾く際にも、より良い音色が出るようになる、と私は感じています。

私自身、「駒の近くを弾く練習」を通して、駒から離れたところを弾いている時の自分の音色も、以前とは違った音色になっているのを感じています。

よりはっきりと響くような感じです。

留学先で、「きれいだけど、“はっきりさ(強さ)”が足りない音」という言葉の表現を聞いたことがあったのですが、それはつまりこういうことなのかな、とあらためて思いました。

(誰かの音を批評した言い方ではなく、「一般的にそういう音になりやすいから、そこを越えていってね」というような文脈で、先生達が言っていました)

もしよければ、「駒の近くを弾く」という弾き方にも、ぜひ挑戦してみてください。

この弾き方に慣れると、より、ニッケルハルパらしい音色、そして伝統音楽らしい芯のある演奏を楽しんでいただけると思います。


以上、「駒の近くを弾く練習をしていて思ったこと」について書きました。

ぜひ参考にしていただけたら嬉しいです。

お読みいただき、ありがとうございました。